前回は日本では人口減少・高齢化が急速に進行しているため、地域の担い手が不足
していることから、地域外の人材の力を地域に取り込むことが必要になっていること
をご紹介しました。その中で、従来対応策として重視されていた地域外から地域に移
住する「定住人口の拡大」や一過性の観光に訪問する「交流人口」の拡大を超えて、
地域と多様に関わる者である「関係人口」の拡大に焦点が当たっています。今回はこ
の「交流人口」の拡大にあたって特徴的な取り組みをしている基礎自治団体をご紹介
します。
〇 島根県邑南町羽須美(おうなんちょうはすみ)地域
島根県邑南町羽須美地域は、全国に先駆けて人口減少と高齢化が進む典型的な過疎
地です。この地域では人口の減少によってJR三江線が廃止になりました。鉄道が廃
線になった地域はさらに衰退が進むといわれています。しかし、この廃線になった鉄
道遺産を生かし、過疎地から新しいチャレンジを始めています。
例えば、JR三江線の跡地を新たな地域資源ととらえ「鉄道ファン」と「地域住民」
が互いに経験や知識を出し合い、廃線あとのイルミネーションを企画したり、それと
併せたトロッコ列車を運行するなど共に地域課題を解決する新たな「交流事業」を創
出。企画に参加した鉄道ファンとのつながりを一過性でなく、持続的なものとするた
め、「サポーター」になってもらい、様々な広報活動等に参加してもらっています。
このように「地域の外の鉄道ファン」=関係人口の力を借りることで、地域住民だ
けでは実現できないイベントを推進し、賑わいづくり、地域の誇り醸成を実現してい
ます。
http://gounokawa.com/ (日本語)
〇 北海道標茶町(しべちゃ町)
全国有数の馬産地である標茶町では「乗馬ファンが何度も訪れたくなる地域づくり」
「馬が繋ぐ“もうひとつのふるさと”標茶町」をスローガンに「関係人口」を創出する
ことを目指しています。
具体的には魅力あるホーストレッキングのコースの整備を行ったり、標茶町では町
で生まれ、全国の乗馬クラブに旅立っていった乗用馬が役目を終え、標茶町の豊かな
自然の中でのんびりと余生を過ごせるように、受け入れのための仕組みや快適な飼育
環境づくりを推進しています。そうすることにより、全国の乗馬ファンがかつての標
茶町を訪問して、トレッキングを楽しんだり、かつて馬が所属していた乗馬クラブの
会員が、愛馬との交流を深めたりすることを目指し、ひいては町と乗馬ファンとの関
係性の深化を図っています。また、これらの事業に必要な財源を「ふるさと納税」で
募るなど、重層的な取り組みで乗馬ファンとの町とのつながりづくりに努めています。
https://dotohorsetown.jp/about/ (日本語)